明け方

できるだけ早く起きて朝やけをみる

2019.10.16 とがる

職場にいると命が削られていくような気持ちにまでなるので、定時になったらすぐに片付けて大きくない声で「お先に失礼します」などと決まり文句を口にしてそそくさと去っている。折坂悠太の弾き語りツアーへ、翌日は映画『宮本から君へ』を観に行った。エンタメに支配されずに生活の中にそっとあることがいい。生活の中にあるものだからいいんだ。前日の折坂悠太は少し退屈に思ってしまった。それでもツーマンの相手のイ・ランさんが素敵すぎてすっかり好きになってしまったので行って良かった。イ・ランさんはとてもお茶目でシニカルで愛に溢れた人だった。「今日が終わると折坂くんと別れることになるからさみしい。落ち込んでいる」とライブ中に感情を嘘なく吐露していたのがとても良かった。アンコールで再び出てきて、ツアーグッズの巾着を紹介したとき「これはなんなの?小さいバッグ?何の用のバッグ?意味がわからない」と不思議そうに話していた時は吹き出した。そうか、韓国に巾着がないのか。それで今日、帰り道にあるシネコンに行きました。朝からそれだけを楽しみに乗り越えた。商業施設に併設されているシネコンなので、そこのお気に入りの中華まんじゅう屋さんで辛みそチーズまんじゅうと肉シュウマイとビールを。平日の夜のスカスカな席で、シュウマイが蒸しあがるまで、まんじゅうだけでちびちびとビールグラスに口をつけて待つのも良かった。向かいのテーブルにいたすごく姿勢よく座ってクレープを頬張っている大学生くらいの女子もまた良かった。そんな呑気な気持ちで劇場に向かうとチケットを失くしていた。スタッフの人に落ちていなかったか尋ねると、届けられてはいないけど、特に何も確認されずに通してくれた。ありがたい。温かい。バカでごめんなさい。

映画は後半までしんどい展開の連続で観ていて辛かった。それでも圧倒的にバカで格好悪すぎる宮本から受け取る愛と生の熱量のせいで、とんでもなく前向きになっている自分もいた。宮本なんて現実にいたら大嫌いなんだけど。また元気なくなった時はみることにしよう。

スピッツが新アルバム『みっけ』を含む全アルバムのサブスクを解禁して歓喜しました。スピッツは紛れもなくおれの青春です。中学生の時に眠れなくて布団に潜ってMDを聴いた。当時女子の間で流行っていたプロフィール帳みたいなやつを渡して書いてもらうやつにも、必ずスピッツが好きと書いていた。スピッツが好きというクラスメイトは話したことがなくても気になった。高校生になるとスピッツが好きなクラスメイトと毎日話をした。歌詞の解釈の違いがたくさんあって面白かった。歌詞解釈投稿サイトみたいなやつに自分の考えた解釈を投稿して満足した。高校を卒業して付き合った彼女に「草野マサムネの歌聴いてると咳払いしたくなるんだよね」と言われて怒った。社会人になってスピッツを聴かなくなったけど、久々に会った高校の先輩と飲みに行って音楽の趣味がバッチリだということがわかり、カラオケでスピッツを歌いまくった。スピッツで歌えない曲はなかった。朝ドラの主題歌を演っているスピッツも、セックスと死について歌っているスピッツもみんな好きだ。これからまたたくさん聴きます。『魔女旅に出る』のAメロの

ほら いちごの味に似てるね

の部分が好きすぎて聴くたびに泣きそうになってしまう。わかってくれる人はいないだろうか。

魔女旅に出る

魔女旅に出る

そして待望の小沢健二のアルバムリリースのアナウンス。まさか自分が生きてるうちにそんな日に立ち会えるなんて思わなかった。『So kakkoii 宇宙』のタイトルのヤバさ。レコード屋さんで予約する時どう言えばいいんだよ。先行配信された新曲『彗星』は完全にLIFE的な耳触りで、これまたジーンときてしまう。歌詞は自身のキャリアを振り返っているようで、

そして時は2020年  全力疾走してきたよね

と、2020年の未来から何かを問いかけられているようにも感じる。ドレスコーズの志磨遼平も『もろびとほろびて』のなかで

僕らの暮らすこの国で オリンピックがもうすぐある

と2020年を歌っている。どちらの曲も今の生活を歌いながらもどこかシニカルで、俯瞰的に見ている。やっぱり2020年は一つの区切りになるのだろうなと、そしてそれは決して明るい未来へ好転する区切りではないことは深く考えなくてもわかる。きっと、気づかないスピードで緩やかに坂を下っていくんだろう。でも、彗星は全く悲観的ではなく、「今ここにあるこの暮らし」を全肯定している(ように感じる)。日本に、ポップソング界にカムバックした小沢健二には一体何が見えているのだろう。少なくとも、彗星を聴く限りでは「向かうところは闇だけど、その中でも思いっきり祝いたいよね」なんて、明るくない「今」を見つめながらも楽観的にもいようよ言っているように勝手に解釈した。何にしても、小沢健二が今の暮らしを歌う時代に生きたいられてとても幸福感に満ちています。ところで、このアルバムリリースの発表はゲリラ的にTwitterで発表されたけど、その後もいくつかのツイートがなされている。おれの今年の七夕の願いは「小沢健二Twitterをやめますように」だったのに、6月頃からツイートを停止していた良い状態が破られてしまった。飽きたら早々にやめてもらいたい。アルバム用にインスタアカウントが出来たようなので、Twitterをやめてそっちだけにならないかな。

彗星

彗星

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すっかり寒くなってしまって寂しいけど、秋の空気は澄んでいて美味しい。やっぱり秋が特別で一番好きだ。でも春にもそんなことを言ってしまいそうです。たくさん外を歩いてそれを感じたいのにどうもダラけて外に出ずじまいだ。仕事の帰りに今時期だけ見られる空の色を大事にしたい。

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いつかティファニーで朝食を 14巻でついに完結したので早速買って読みました。連載モノで唯一単行本を買い続けていた作品。目に涙をためて読みました。最後まで思い描いた筋書き通りにいかないのはまさに人生そのものだった。女性の恋愛や友情、仕事を丁寧に描いているけど胸を打たれているのは女性だけじゃないのです。描かれた登場人物の言葉に何度救われてきたか。読み始めてわかりやすくおれに朝食ブームが来て、当時の職場近くのミスドが朝の特別な時間を過ごす場所になったのは良い思い出だ。あの頃の気持ちをまた思い出したので、恋人を誘ってどこか美味しいモーニングを食べに行きたいんです。最近平日の朝は近所のコンビニスーパー的なお店でなぜか買えるコストコディナーロールです。580円で1.3kgも買えるので冷凍している。フライパンでマーガリンを熱して、その上で焼いて食べるのが幸福。パンとコーヒーの喜びを28歳になって知りまして、こういうささやかな喜びをこれからも知ることができるならこの人生最高すぎるんですけどね。

 

今夜も月がきれい

それだけで幸せ

 

いつだって苦しいよ

だけど今日は楽しい

 

カネコアヤノ / とがる