明け方

できるだけ早く起きて朝やけをみる

2021.2.20 あるいは2021.2.21 anna

家を建てるので、その打ち合わせがちょくちょくあるのだけど、毎回少しずつ「自分たちの棲家」ができることへの喜びみたいなものが増していく。まだまだ実感はないのだけれども。2人でたくさんこだわって、生活に便利な間取りを考えていて、それはそれでもちろん楽しいし、大事なことなんだけど、もっとわくわくするのは生活にはあってもなくてもいい部分を考えることです。例えばスキップフロア(中2階)にあるごろごろする空間だったり、そこから一段上がった先の踊り場に設ける天井高4m超の本棚のことです。一時期本気で現実逃避をして本屋をやりたいと考えていたこともあり、本より本棚が好きなくらいなので、自宅で自分の思うままのそれを作ることができるのが嬉しいのです。生涯手元に置いておきたい本や、落ち込んだときに恋人に呼んで元気を出してほしいもの、開くだけでうっとりするような美しい写真集、いつの日か家にいるかもしれない小さい子どもに読み聞かせたい絵本、ひいては、成長した頃にもっと世界を広げてくれるものまで。人物はその人の本棚に表れると思っているので、人生をかけて自宅本棚で自己主張をしてやりたいと思います。

2月に入ってから、仕事が少し忙しくなってきてあまり気分が盛り上がらない。本当は恋人と夜にスーパーに集合して恵方巻きが食べたかったのに。そんな中での楽しみといえばもっぱらラジオです。スマホのデータ通信を無制限のプランに変更したので、ちまちまラジオクラウドを家でダウンロードすることなく、radikoで全編を楽しんでいる。やっぱり音楽が流れるラジオは良い。どうして音楽はラジオから流れるだけであんなにエモーショナルになるんだ。バナナムーンの曲対決を聴けるようになったのも嬉しい。星野源の『おもかげ』が流れた。

もう30歳なのに、結婚することを上司に報告するやつができないでいる。もう3週間くらい「今日も言えなかったな」を連続していてしんどい。職場での口数が、三四郎相田がゴールデンの番組のひな壇にいる時くらい少ないので、いざ喋るとなるとやり方がわからなすぎる。いや、頭ではわかるのだけれどもこわくて腰が引けてしまう。前の職場では近くにいる同僚に全然気にせず話しかけることができたのに。環境の変化はこわい。

週末、たくさん寝られて良かったのだけどなんだか無気力が続く。メルカリで買ったエドワードゴーリーの『おぞましい二人』が届いたので読んだ。2人の最後の別れの場面で目を見つめ合っていたのが印象的だった。モナはハロルドに出会わなければ、二人で一人にならなければ、子どもたちを殺すこともなかったかもしれないけど、やっぱりハロルドが最愛のパートナーだったのかな。怖いというより、みじめで悲しい話だった。

しばらくYouTube空気階段のコントを観たりしていたけどどうにも気分がすぐれず、寝転がってあだち充の『ショートプログラム』を読み始めた。こんなに面白かったっけ?というほどにページをめぐる手が止まらん。

 

空気階段単独公演『anna』の配信を買った。2500円を躊躇してしまうほど財布の紐はかたい。でも本当に好きなものにお金を使えないなんて不幸になってしまうので、ちゃんと決心して買いました。オープニングがかっこいい。空気階段はもうテレビにもたくさん出ていて、しっかりと売れ出しているのだけども、軸がぶれずにコントとラジオを大切にしていて嬉しい。そしてやはり二人ともルックスが美しすぎてうっとりしてしまう。コントをやるために生まれてきた顔面だ。おぎやはぎの2人も「かたまりは普通に美形だし、もぐらはかわいいし何より上品」と言っているが完全に同意です。正直言って、前半のキャラとかSF的な世界観強めのコントはあまり好みでなく、笑いの量も少なかったので、少し退屈に感じてしまった。オムニバスの伏線回収もよくある手法だし、前回の単独ライブでも用いているので、その巧みさみたいなことを絶賛する気にもなれず。ただ、そんな気持ちを完全に吹っ飛ばすくらいに、後半の恋とラジオのコント「anna」素晴らしかった。泣いてしまった。もちろん、10年後のタクシー内で聴くラジオ最終回が電波ジャックされてしまうくだりはちゃんと吹き出して笑ってしまった。キングオブコントで恋の尊さを伝えた水川かたまりだけど、それをさらにアップデートした叙情的な恋のコントでした。二人のルックスと抜群の演技力、水川かたまりの書く物語はもう芸術作品です。つい、水川かたまりの前妻のように「エモ〜い」などと言ってしまいそうになる。それにしても、高校時代から生きにくそうなヤマザキ(ヤマザキ春のパンスト祭)とシマダ(水曜日よりの使者)のようなキャラクターを描くのが本当に上手だな。シマダの「ハンッ…」「フンッ…」っていう笑い方、とても好きだ。

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休日は楽しい。大体朝は『サンデージャポン』か『ドキュメント72時間』を観ながら食パンを食べて、コーヒーを飲む。その後イヤイヤ二人で洗濯をして、ああだこうだと小競り合いをしながらほかの家事も進める。今日は出かけないからとシャワーを浴びなかった。大体昼過ぎには一通り終えて、何して遊ぼうかという相談が始まる。そういう時は大抵、面白そうな映画を探して観ようかという提案がどちらかから出るのだけど、大体30分以上探しても見つからない。普段からウォッチリストを更新しておくことの大切さを感じるのだけど、その次の週までまた忘れている。それで結局、お互いにタブレットで好きな動画を観たりゲームをしたりしている。この時間が何より愛おしいし、家が建って居住空間が広くなって恋人と離れた場所にいるようなことになると思うと寂しい。できれば恋人の存在を感じられる距離にいたいのです。まあ今からそんなことを心配しても仕方がないので、気の利いたポップソングを聴きながら、ブックオフオンラインで踊り場の本棚に置く古本を漁っていた。古本は他人が一度買って読んだ本というそれだけの事実に興奮する。なんなら手に入れてから読まなくても、それはそれでいい。喉が渇いてきたので昨日スーパーで買ったサントリーの翠ジンをソーダで割って飲んだ。アルコールくささがなくて、飲みやすすぎてやばいやつだ。グビグビいってしまう。久々に飲んだジンのその味から、18から20歳の頃一時的にカクテルに凝ったことがあって、よく地元のスーパーでトニックウォーターやらライムやらを買い込んでいたことを思い出す。あの頃はわかりやすいモラトリアムで、何をしていても楽しかったけど、その反面不安でしんどかったな。その頃出会った人たちがどうしているのかふと気になることがある。もう連絡先も残っていない人がほとんどだ。ほんの1、2年の繋がりだったので、おれ以外の人にとってどういう関係性という認識だったかわからないけど、おれにとっては思い出深い時間を過ごした人たちと思っている。いつか偶然また出会えたら、おれのこと覚えていてほしいな。

この街は春になると、雪どけのにおいと排水溝に流れる水の音がする。この前、やけに暖かい日に、先取りしてそれを感じてしまった。まだ春は先なのに。この春はどうしても素敵な季節にしたいです。気軽に外に飲みに行けなかったり、ライブに行けなかったり、それくらいは我慢するので、どうか頼みます。みんなにとってもそうなりますように。