明け方

できるだけ早く起きて朝やけをみる

2020.8.14 書店にて

忙しくなってやらなくなっちゃうようなことは本当の趣味じゃないなと思った。今年に入ってから全然本を読んでいない。本当はきっと何かに役立てたくてインプットする読書なんて好きじゃないんだ。だから何かに役立てるためにする読書はつまらない気がして後回しになる。読書に限らず、芸術とかスポーツとか、コロナ禍で蔑ろにされてきたものやことも、結果的には誰かの役に立っているけど、それは役に立てるために存在しているわけじゃないから。感動とか全て結果論なのに「観ている人に勇気を!」とか自分で言っちゃう芸術家とかスポーツ選手は胡散臭いと思ってしまう。

話がそれた。本を読むことが趣味じゃなくても、たまには読みたくなるし、書店や本棚が好きだということは変わらないので、今日は仕事を昼で切り上げて江別の蔦屋書店に行きました。車じゃないと行きにくい場所なのだけど、わざわざJRに乗って行くのも悪くないと思って、午前の仕事中に決めた。

JR江別駅、この町にあのおしゃれ書店があるのかと疑ってしまうほど寂れている。こんなだっけ。f:id:shindoi1:20200814125222j:image

そして駅前のこの広すぎる謎の五叉路。白線がほとんど消えていて地元民でなければ怖くて走れないのではないか。

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書店方面の路線バスを待っていると、おばあさんに「国鉄バスはどこでしょう…」と、質問しているのか独り言なのかわからないトーンで囁かれ、視界に映るJRバスのバス停を指差してみた。どうかあれで合っていますように。その後ももう1人別のおばあさんに同じことを聞かれたから、地元民じゃないことを告げた上で自信なさげに指をさしておいた。無事に目的地へ辿り着けますように。おれは目的のバスに乗り、最寄りのバス停「若草町」へ。あまり知らない町でバスに乗るのは少し不安だけどワクワクもする。殺人的に冷房が効いた車内で尿意を堪える。職場で1日かけて飲み切る予定だった2Lの水を半日で無理やり飲み切ったせいだよ。

バスを降りると実家に住んでいたころわざわざ車で買いに来ていたお豆腐屋さんを発見。何か買って帰りたいけど荷物になりそうなので断念した。蔦屋書店まではここからまだ約5分歩くのだけれども、その経路のほとんどがこの素敵な小径なので苦じゃない。強いて言えば尿意忍耐が苦だ。

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このみちを抜けるとすぐに蔦屋書店に着きます。札幌からこんなにも楽に来られると思わず、車借りなきゃとか考えてたのに少し拍子抜けした。平日だから少しは空いてるかと思いきや、世間はお盆真っ只中なので家族連れで駐車場はパンパン、お昼時ともあり食の棟のフードコートもパンパン。それでもやっぱりここへ入ると心が躍る。昼食は札幌の薫製料理屋のOZがやっているガパオライス屋さんでプレートを頼みました。ビールは175°DENOで山椒ビールを調達。本当なら今日はライジングサンに行っているはずだったのでせめてもの夏フェス感。

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14時、食後、店内を小一時間彷徨って、気になる本を手に取って空いている椅子に座る。本を読まずともこの景色を見てぼーっとしているだけで心が洗われる気がする。

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店内にいる人を見ていると当たり前にみんなマスクマスクマスクだけど、バカそうな輩ほど顎マスクという雑な統計がとれました。この前小樽に出かけた時にもそう感じたからきっと正しい統計のはずです。なぜあえて顎にずらしたまま会話をする。イオンへ行ってほしい。

Apple Musicのカフェミュージックプレイリストをかけて、うたた寝をしたり意識を取り戻したりしつつ阿波野巧也『ビギナーズラック』を読んだ。

ビギナーズラック

ビギナーズラック

 

イヤホンから、君島大空と誰かがカバーした七尾旅人の『サーカスナイト』が流れてきてやはりライジングサンを想う。幾度となく石狩で聴いたサーカスナイト。去年は明け方に恋人と寝転がりながらこれまた夢うつつで聴いていた。こうやってなす術もなく失われた時間のことを考えると、どうにも怖くなる。また次は本当にあるのだろうかと。その次にかかった曲はシンリズムの『暮らしの半分は』という曲だった。ポップの先人たちへの敬意が感じられる彼らしい曲でめちゃくちゃ良いな。シンリズムは一昨年のボヘミアンガーデンでみたっけ。青空の下で観られたの気持ちよかった。確かその後はヒックスヴィルで、幸せすぎてビールを飲みながら目が潤んだんだった。

16時、暮らしの棟へ移動。いつの間にか雨が降りはじめていたことに気づく。目に留まったマニキュアとネイルケアグッズ4点を恋人のお土産に買う。おれにも甘皮処理やってもらおうという目論見も込みで。早く渡したい。

17時、スタバは相変わらず常に列を作っていたから別のカフェのコーヒーをテイクアウトして座る。せきしろの文庫を3冊と一緒に。これは文句じゃないけど全体的に品揃えは良くない。売り場面積も広くないから。

たとえる技術 (新潮文庫)

たとえる技術 (新潮文庫)

  • 作者:せきしろ
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 文庫
 
まさかジープで来るとは (幻冬舎文庫)

まさかジープで来るとは (幻冬舎文庫)

 

読書の最中、我慢できずまだ仕事中の恋人に「お土産買ったから楽しみにしててね」などとLINEを送ってしまう。楽しみなことは隠さずに先走ってバラしてしまう性分だ。喜んでくれるだろうか。ふと外をみると雨がさらに強くなっている。おじさんが買ったばかりと思われる本を傘がわりにして車の方へ走っている。買ったばかりなのに。それにしてもここでは本を買う人のレジの列が長い。この店で買いたくなるというのは大いに共感できるけど、みんなこうも紙の本を買うのかと驚く。やっぱり気に入った本はとっておいて、いつか家に書斎を作ってそこに飾って、自分だけのベスト盤みたいな本棚を作りたいな。気に入った本は手元にちゃんと持っておくことを大切にしたい。

雨がどんどん強くなっていく気がする。店のガラス越しでもその匂いを感じられそうだ。この様子が続くとなるとバス停まで歩いて行くのも一苦労だ。そういえば帰りのバスの時間を調べていなかったことに気づいたので時刻表を見てみると20時が最終の便とわかる。思っていたより早い。今日はしばらくこもって過ごして、空いてきた夜からが本番くらいに企んでいたのに。あまり帰りのことを考えたくないのと、雨の日に本屋で足止めをくらうのも悪くないと思って一度考えることをやめた。たまに一人で無計画に過ごしてみたいと思った。

読書に戻ると、隣に座った大学生くらいの女子が、椅子の前に置いてある大きめのビーズクッションのようなものの感触を確かめ始めた。それは一度や二度ではなく幾度となく繰り返される。取り憑かれたように確かめ続ける女子に恐怖すら感じた。手には読もうとしているであろう写真集を何冊も抱えているのに。柔らかいものに飢えているのか。フードコートにあるおはぎ屋さんのおはぎはきっともっと柔らかくて、おまけに美味しいですよ。

18時、恋人からLINEの返信がくる「きゃっほう」と。いつの間にか柔らかさを確かめる女子は、ボーダーの派手な傘をもつおじさんに変わっていた。店内がだいぶ空いてくる、お腹も空いてきたので食の棟へ。渡り廊下に屋根があるけど、風も強いようで横から雨が当たってくる。すぐ何か食べようと思っていたけどカルディに引き寄せられてカレーペーストやらスパイスを眺めてしまう。いつかカレーをスパイスから作りたいけど、はまると台所がスパイスだらけになる可能性が高いため今は回避。結局レインボーペッパーのみを購入。夕食は札幌市内で何回も食べている175°DENOの汁なし坦々麺にした。お腹が空いていたけど無料の大盛サービスに手を出さなかった自分を褒めたい。絶対に気持ち悪くなって後悔するから。

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夕食後、少しだけ歌集を読んで、止みそうもない雨に見切りをつけてバス停へ向かう。使い込んだ折りたたみ傘が全然雨を弾かない。水を吸ってどんどん重くなっていく。行きは緑で素敵だった小径も一筋の光も入らない闇の道と化して少し不気味だったけど、雨で濡れた草木の臭いがキャンプの夜を思い出させて子どもの頃の思い出が浮かぶなどした。

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と、良いように書いてみたけどやっぱり大雨強風に低気温も辛いものがあり、おまけにバスが全然定刻にやって来ない。靴も染みてきて鳥肌が立ちはじめ、いよいよしんどすぎるなと感じ、バス停の時刻表を照らすと、「8/14は土日祝ダイヤ、土日祝はコロナで減便 詳しくはHPを」となっており、乗ろうとしていた便はしっかり減便対象となっていた。そりゃ濡れながら忠実に待てどもこないはず。道路をはさんで向かいに偶然とまっていたタクシーにスマホのライトで合図するも気づかれずに発車され、大雨の中知らない町の真っ暗な道路を駅方面に歩き、なんとか屋根付きのバス待合所に到着。電話で地元のタクシーを呼んでなんとか駅についた。乗ろうとしていたJRを流し、札幌に着いてから家の近くまで行くバスへの乗換が5分しかないという絶望的なタイムスケジュールが確定してしまい、寂れた江別駅のホームで立ち尽くす。これならもっと書店でゆっくりして時間を気にせずタクシーを使うんだった。少し前に「無計画で過ごしてみたい」なんて謎の思い切りをしたことを早くも悔やむ。北海道の夏はいつまで続いてくれるかわからないけど、半日の夏休みで小旅行気分を味わえたのでまあ良しとします。さて明日からは恋人がいる週末。ライジングサンはないけど、余すところなくその時間を堪能する所存です。